新メニューから定番のデリメニューまで、幅広い客層、人種に受け入れやすいように考え抜かれたカイマナファームカフェのフードたち。

ワイキキの喧騒から車で10分。建つ家にも歩く人にも、ハワイのローカル感が少しずつ色濃くなってきたころに見えてくる、「Kaimana Farm Café(カイマナファームカフェ)」。真っ白な壁に開放的な窓が素敵な店先には、今日もおすすめのメニューが並びます。ドアを開けると優しい笑顔で迎えてくれるのは、オーナー兼シェフのJunkoさん。ローカル客にも観光客にもファンが多く、ガイドブックには必ずといっていいほど登場するお店です。オープンからたった3年で2店舗目となる系列店「Kaimana Kitchen(カイマナキッチン)」もスタートする好調ぶり。アメリカの口コミサイトでも好評価を獲得するデリカフェが今、ワイキキで人気の理由とは?Junkoさんが大切にしているカフェへのこだわりと想い、そしてそのルーツを太陽が輝くハワイでお伺いしてきました。

ローカル野菜をファーム(農場)からテーブルへ

2014年のオープンから、ほどなくして日本向けのガイドブックやローカル誌に紹介されると瞬く間に話題のカフェに。ハワイ在住のモデルや有名人にもリピーターを抱えるその人気の秘密は、新鮮なハワイのローカル野菜を使ったメニューにあります。カイマナファームカフェでは複数の地元農家と直接取引し、その他に地域のファーマーズマーケットにも毎週のように出かけては、新鮮な野菜をお客さんのテーブルへと運んでいます。「ナチュラルに育てられたハワイ産の野菜をできる限り使うことで、食べに来てくれる人の体にもヘルシーで、さらに食を通してコミュニティーにも貢献するカフェでありたい」と語るJunkoさん。そんなローカル野菜の魅力を最大限に引き出した人気メニューが、数種類のデリメニューを組み合わせた「Kaimana Power Bento(カイマナパワーベントウ)」。カフェの看板メニューの一つでもあります。

彩り豊かなカイマナパワーベントウは、お野菜の旨みがしっかり味わえます。

日本人であるJunkoさんが考案する色鮮やかなデリメニューは新しいアイディアに溢れていながら、どこか懐かしい“お惣菜”の香りがほんのり漂います。日本人なら誰しも一口食べると「そうそうこれが食べたかった」と思わず微笑んでしまいそう。それでいて、今まで食べたことのなかった新鮮なアクセントも鼻に抜ける。まさにJunkoさんが目指していた、日本とそしてもうひとつのルーツであるカリフォルニアとのフュージョンが具現化されたメニューなのです。

Junkoさんがハワイに移住する前に過ごしていたのが、実はここLA(ロサンゼルス)。LAでの暮らしの中で、カフェを始める「理由」を見つけ、さらに目指すべき「理想」に出会うことになります。今のカイマナファームカフェのベースを築くことになったカリフォルニアでの生活は、彼女にとってなくてはならない局面だったといえます。

Junkoさんのアイディアとハワイの新鮮野菜で溢れるデリメニュー。

カリフォルニアのカフェに恋をした

「もともと食べることが好きで、カフェという異空間で過ごす時間も大好きだった」と語るJunkoさん。お姉さんがカフェを経営されていたこともあり、LAでも最初はなんとなくカフェに通うことが多くなったそう。そこで感じた日本とカリフォルニアのカフェの大きな違い、それは話をお伺いする中でもJunkoさんが何度も口にされていた「カフェ年齢」というもの。

「日本に住んでいた頃、喫茶店ではなくいわゆる“カフェ”に行くときには、どこへ行っても暗黙の年齢制限をなんとなく感じていたのです。それが都会になればなるほど顕著。流行りのおしゃれなカフェには若い子しか入れないような空気が漂っているのですよね」と少し懐かしむJunkoさん。その感覚がカリフォルニアに来て180度変わったのだそう。「どんなにおしゃれで人気のカフェであっても、おじいちゃん、おばあちゃん、おじさん、おばさんが楽しそうに食事して、コーヒーを飲んでいるでしょ?ときには、Tシャツで、ときにはビーチサンダルで。それってとっても素敵なことだと思ったのです」。

確かに、LAのカフェは、驚くほどおしゃれな店内であるにも関わらず、その空間自体は気取らず、くつろぐ人々も自由で気まま。Junkoさんはそんなカリフォルニアのカフェにあっという間に恋に落ちてしまったそうです。それからは「私もいつかこんなカフェを開きたい」という想いが強くなり、アパレル関係の仕事の傍ら、時間を見つけては100件以上ものカフェを巡り歩いたのだとか。そんなカフェ探索の中で、カイマナファームカフェのインスピレーションとなる、いくつかの運命の出会いを果たしました。

ラスティックな雰囲気のカイマナファームカフェの店内。
アンティークのプロップがおしゃれな空間を演出してくれます。

“理想のカフェ”に通じる運命の出会い

カリフォルニアで行った100件以上のカフェの中でも、何度も通うほど好きになったカフェがあるそう。そのひとつがOCのラグーナビーチにある「Zincカフェ」。デリメニューも揃えるおしゃれな人気カフェですが、そのメニューは至ってシンプル。さっとソテーした野菜やじっくりローストしたポテトなど素材の味を活かしたデリが多く、Junkoさんの“いつかやりたいカフェ”のイメージとぴったり重なったそう。「コーヒーと軽食というカフェは最初から頭にありませんでした。異空間でその時間を楽しみながらも、ちゃんと美味しい朝食、栄養たっぷりのランチを食べることのできるカフェというのは絶対条件でした」と語る彼女。実際にカイマナファームカフェのメニューはデリの他にも、しっかりとお腹を満たしてくれる食事メニューが多く、ボリュームもたっぷり。最近のカフェの中には、ビジュアルを重視するあまりに、びっくりするくらい少量のフードを出すところもありますが、「ちゃんと食べて欲しい」という願いの上に作られたカイマナファームカフェのメニューは、食を大切にするJunkoさんらしいラインナップといえます。

Junkoさんも大好きだったOCのZincカフェ。

ハワイに通じる“ひらめき”

そんなメニューの一つともいえるのが、大人気のフレンチトースト。実はこれもインスピレーションはLAのロングビーチにあるカフェなのだとか。当時甘い系のパンを使ったフレンチトーストは多かったものの、バケットを使ったものは少なく、Junkoさんの好みにも合っていたそう。現在カフェで出されているフレンチトーストは、「バゲットを使うというアイディアを元に、こだわりの手作りマスカルポーネチーズを加えたりして、オリジナルのフレンチトーストを完成させました」。私自身も頂きましたが、ふわふわのパンにしっかり味が染み込み、夢のように美味しい!一口食べるたびに目を閉じては、幸せのため息が漏れるほど。ボリュームはありますが、ちゃっかり一人で完食しました。こんなに美味しいフレンチトーストに、ハワイでしか会えないのが悲しいですが、LAではなくハワイにカフェをオープンすることになったのには、Junkoさんが描いた「3年計画」がその理由にありました。

大人気のバケットフレンチトーストは、カフェの看板メニュー。

カフェをオープンする計画が徐々に進む中で、LAではあまりにも広過ぎると考えたようです。「どこへ行っても人が多く、どこへ行ってもおしゃれなカフェがあり過ぎる。経験もない日本人がカフェをひっそりと開いたとしても、例え信念を持って良質なフードを提供したとしても、埋もれてしまうのではないかと思ったのです」。そこで、ふと頭に浮かんだのがハワイだったのだそう。オアフ島であっても、栄えているエリアは数えるほどで、人もサービス業もそこに密集しているのが実情。その上に、日本からの移住者も観光客も多いことから、メディアや情報も毎年のように更新されている。「それだけ最新情報や最新トレンドへの需要が高い地域であれば、新しくオープンした小さなカフェであっても発掘してもらえる可能性は高いと考えました」と語るJunkoさん。最初の広告費は、それほど確保できないことは分かっていた上で、1年目は雑誌などに取り上げられること、2年目はテレビで紹介されること、3年目は日本のイベントなどに出店すること、この3年計画を立て、それがハワイであれば実現できるとそのオープンの地を決定したのです。

誰もやったことのない何かを

Junkoさん自身も振り返るように「ハワイでやることが決定してからも、1年半ほど物件探しでなかなかオープンには辿り着けなかった」そう。しかしその間も、LAでのカフェ巡りを続け、メニューや空間作りのインスピレーションとなる勉強はコツコツと続けていたJunkoさん。そんな彼女の熱心な探索と研究の日々があったからこそ、今のカフェがあるのだといえます。ハワイでカフェをオープンする上で、3年計画と一緒に考えていたのが、カフェの三本柱となる看板メニュー。その1つ目が前述したデリメニューを活かしたカイマナパワーベントウ、2つ目がフレンチトーストとなったわけです。当時、バケットを使用したフレンチトーストを出すお店はハワイでは一軒もなく、Junkoさんのカフェが第1号店となることから、そこにも大きな可能性を見出したのだそう。「せっかく新しいカフェをオープンするのに、すでに流行っていることをやっても仕方がないですよね。誰もやったことのない新しいことをして、それを知ってもらうことの方がおもしろいし、将来に繋がると思ったのです」と爽やかに語るJunkoさん。そこでさらに考案されたのが、カフェの3本目の柱となる「スフレオムレツ」でした。「パンケーキが溢れているワイキキで、オムレツを自分なりにアレンジすることで、誰も食べたことのない新しいオムレツを作りたかった。それがカフェを知ってもらうきっかけになり、気に入っていただければカフェを支える看板メニューになるかもしれないから」と熱を込めて語ってくださったスフレオムレツは、本当に食べたことのない新食感で、口の中で溶けてしまうほど柔らかい。付け合わせのトマトリゾットとも相性抜群でした。

新食感のスフレオムレツ。まさにスフレの柔らかさ!

最初に描いた想いを、毎日真面目に丁寧に

LAで丁寧に育ててきた小さな芽が満を持して花開いたのが、2014年の10月。日本人シェフが作るローカル野菜を使ったナチュラルフードはあっという間に人気になり、『地球の歩き方』などのガイドブックだけでなく、『CREA』『SPUR』『ハワイのひなの』と言った女性に人気の雑誌や本でも取り上げられました。その後は『有吉の夏休み』や『ハワイに恋して』などのテレビ番組などでも特集され、Junkoさんの3年計画は期待以上の形で実現されました。「でもハワイに来て分かったのは、最初の食いつきはいいのです。ただ大切なのはそこから。“New Open”という話題性を失った後に、自分たちでどのくらい続けていけるか。1年目はお客さんに苦しんだときもありましたね。お店のアップダウンに自分もアップダウンしたりもして 」。それでも現在のような人気カフェであり続けた理由を伺うと、Junkoさんは少し恥ずかしそうに「そんな人気カフェだなんて。まだまだ勉強中ですよ。でもリピーターのお客さんがしっかりついてからは、客入りが少し安定したようには思います。自分がLAにいる頃に思い描いた理想のカフェであるために、どの年齢の方でもゆっくり過ごせて、食を通して健康になれるような料理を提供する。毎日それを続けながら味を守っていたら、自然とリピーターさんがついたのかな。なんて、偉そうに言っていますが、本当にまだまだこれからなのです。だから人も育てていこうとも思っています」。

誠実な人柄がうかがえる笑顔のJUNKOさん。

実際に私自身がお店にお邪魔した朝も、少し年配のご夫婦が朝食にいらっしゃっていました。「“日本ではカフェに行けないけれど、ハワイに来たらこのカフェには気軽に入れる”と言って毎回のように来てくださるお客さんもいて、それこそが私の理想なのです。ローカルの方、観光客の方など関係なく、また、ぜひとも年配の方にも来ていただきたいですね。お子さんも大歓迎です。私自身も保育士の経験があるので、子どもがいても気兼ねなく食べられる場所はお母さんにとっては大切。少し騒いでお水とか倒しちゃっても、私が出て行って、“大丈夫、大丈夫!”と笑いながら言ってあげたい。そういう意味で、カフェ年齢というものを取っ払ってしまいたいのです。そのために、どの世代の方がいらしても安心して食べることのできるお食事を用意していますから」と優しく笑いながらも、「なんだか、また偉そうなこと言っちゃったかな?まだまだ本当に勉強中なのですけどね」と謙遜するJunkoさんには、お店の窓から漏れるハワイの晴れやかな太陽が本当にぴったりでした。

ハワイの青空に映えるカイマナファームカフェの外観。

まだまだ勉強中は、まだまだ飛躍中

今回インタビューさせていただいて、Junkoさんがカリフォルニアのカフェに恋したように、私もJunkoさんが手掛けるカイマナファームカフェにすっかり夢中になってしまいました。店内にいらした全てのお客さん一人一人に、丁寧な挨拶をし、ちょっとした世間話にも笑顔が溢れる。それは彼女が思い描いていた「おしゃれだけど、安心する」空間そのもの。インタビュー中、何度も仰っていた「まだまだ勉強中なのですよ」という謙虚な姿勢も、毎日丁寧に誠実に作られるお料理の味からもきっと伝わるはず。新しいメニューも定期的に考案し、来店するお客さんに常に新しい風を運んでくれるカイマナファームカフェ。今回すっかり大ファンになってしまった私は、これからのさらなる飛躍を期待して、毎年ハワイに通う口実ができました!

Kaimana Farm Café+Deli
845 Kapahulu Ave Honolulu, HI 96816
(808)-737-2840
Web: https://www.kaimanafarmcafehawaii.com/
*2018年7月には、阪急梅田本店で開催される「ハワイフェア2018」に出店予定。

この記事を書いたライター

Beauty Lifestyle Writer

東京でファッション誌の編集・ライターとして活動後、渡米。LAではセレクトショップのバイヤーに。妊娠、出産を機に退職した後はフリーランスのライターとして活動再開。Newスポットの探索、本屋巡り、図書館でお籠り、ハワイへの逃避行が大好き。娘の笑顔とアイスクリームさえあればとりあえず幸せな30代女子です。

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