「アフリカ女性の生活を向上させたい」その思いが生み出した布製スロークッカー「ワンダーバッグ」

スロークッカーは、クリスマスやウェディングのギフトに選ばれることも多く、アメリカでは一家に一台あると言っても決して大げさではないほどポピュラーな電気調理器。材料と調味料を入れてスイッチを押してしまえば、仕事や家事、外出をしている間に調理ができるとあって、共働きが多いアメリカの家庭では、長年愛用されているキッチン家電のひとつです。

そんな愛用者の多いスロークッカーに、近年、エコ意識の高い人を中心に人気が出始めているのが布製のスロークッカー「ワンダーバッグ(wonderbag)」。極厚キルトで作られた大きなクッションのようなデザインは、調理器というよりはインテリア雑貨のようですが、一度沸騰させた鍋を入れたら、余熱で約12時間まで調理できる優れもの。電気ガスなどの燃料要らずで、アウトドアにも持ち運べるポータブル性も兼ね備えた新発想のスロークッカーです。

電力やガスの利用を極力抑え、エコクッキングを可能にしたワンダーバッグ。その誕生には、一人の女性の強い思いとミッションが大きく込められています。

「アフリカ女性の生活を向上させたい」という思いから誕生

南アフリカに暮らすサラ・コリンズ(wonderbag創業者)は、社会経済活動に関わる中で、アフリカの農村部の住民の、とりわけ女性たちの生活を向上させたいと長年模索し続けていました。そしてひらめいたのが、「調理に掛かる労力を軽減すること=保温で調理ができる道具を作ろう」ということでした。

「アフリカ女性の生活を向上させたい」その思いが生み出した布製スロークッカー「ワンダーバッグ」

アフリカでは、ほんの一部の都市部を除き、今もなお火を起こして調理をしているのが現状。そのため毎日何時間も遠出をして薪を集めに行かなくてはなりません。この仕事は、女性や子どもが担っています。一日の大半を費やす薪拾いは大きな負担であり、女性たちは日々薪拾いと煮炊きに追われ、子どもたちは学校に通うこともできません。また調理の焚き火からの煙害は5歳以下の乳幼児たちの健康を害し、死に至る危険もあるとか。

サラは思いついたアイデアを形にした1つ目のワンダーバッグをたずさえ、9人の孤児の面倒を見ていた女性のもとを訪れて、生活を共にし、このバッグが女性や子どもたちの救いになるかを自ら試してみたと言います。

「アフリカ女性の生活を向上させたい」その思いが生み出した布製スロークッカー「ワンダーバッグ」

3ヶ月も経たないうちに、毎日の薪拾いは1週間に1回となって、子どもたちは学校に通えるようになりました。さらに、女性たちは薪拾いに費やしていた時間を使って、靴を買うなど日用品に使うお金も作れるようになりました。ワンダーバッグは地道に、そして確実にアフリカの人たちを支援する力になると確信し、サラの長年の夢はここからスタートしていきます。

先進国からの「BUY and GIVE」

「アフリカ女性の生活を向上させたい」その思いが生み出した布製スロークッカー「ワンダーバッグ」

ワンダーバッグでは、ワンダーバッグファウンデーションと呼ばれる活動母体を設立し、支援活動に取り組んでいます。ワンダーバッグの支援プログラムのユニークなところは、その寄付の方法。アメリカなど先進国でワンダーバッグが購入されると、もれなく1個がワンダーバッグファウンデーションに寄付され、そこから支援を必要としているアフリカのファミリーに届けられるという仕組みです。品物を渡して終わりではなく、ワンダーバッグの使い方の指導を始め、女性を対象にワンダーバッグで増えた余暇を生かして、収入を得るための職業訓練、健康診断、環境衛生教育など総合的に生活向上のための支援を実施しています。

「アフリカ女性の生活を向上させたい」その思いが生み出した布製スロークッカー「ワンダーバッグ」

スタートから5年後には、アフリカ、ヨーロッパ、中東、アメリカで70万個のワンダーバッグが売り上げられ、同じ数だけ支援を必要とする人たちに寄付されました。さらに次の目標は10億個を売り上げ、10億人以上の人々を支援すること。21世紀になっても、まだ薪拾いから調理を始めなければならない人たちがこの世界には多くいるという現実。サラの活動はこれからも続いていきます。

想像を超える保温力とそのデザイン性も魅力

「アフリカ女性の生活を向上させたい」その思いが生み出した布製スロークッカー「ワンダーバッグ」

私の場合、引っ越した家のガスコンロが思うほどトロ火にならず、煮込み料理が困難になってしまい、解決策を探しているときに知ったのがこのワンダーバッグでした。「布で調理できるの?」と半信半疑でしたが、想像を超える保温力で、エコクッキング!作った料理の保温や保冷にとても重宝しています。おでんやポトフなどをワンダーバッグで作る機会が多いのですが、大根やジャガイモにもしっかり味が染み込み、ほっこりと美味しく、朝から余熱で作った料理とは思えない出来栄え。これならアフリカ女性の薪拾いの労力も大きく軽減されて、余暇の時間が生まれるだろうと、サラの着目点の鋭さに感心しきりです。ワンダーバッグで調理するたびに、もう一個のワンダーバッグも今頃アフリカのどこかに届けられて、女性たちの大きな助けになっていることに思いをはせています。

余談ですが、色彩が鮮やかなアフリカンバティック布にパンプキンのような丸いフォルムも可愛いので、あえて収納せず椅子に置いて部屋のアクセントに。今のところスロークッカーと見破られたことは一度もありません!

ワンダーバッグは現在、アメリカとイギリスでのオンライン販売のみですが、今後は販売地域を広げていく準備中とのこと。日本で人気に火がつくことも、そう遠い日ではないかもしれません。

参考

https://thewonderbagshop.com

この記事を書いたライター

Beauty Lifestyle Writer

サンディエゴの日系出版社にて勤務後、東海岸への引っ越しを機にフリーランスライターに。再び南カリフォルニアに居を移し、窓から見える青い空とパームツリー、窓際で昼寝をしている愛犬を眺めているのが目下最大の癒しです。

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