Photo by libertygrace0

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ここ数年アメリカで非常に多く見かけるのが、「口ヒゲ」モチーフです。クラシックでありながら少しユーモラスで可愛い口ヒゲモチーフ。

インテリアから、文房具、小物、アクセサリー、Tシャツ、はたまたネイルアートに至るまで、全米で大流行しているこの「口ヒゲモチーフ」。日本にも飛び火しているようなので、皆様もきっと一度はご覧になったことがあるのではないでしょうか。

この「口ヒゲモチーフ」に、実は隠れていた意味があることをご存知でしたか? 

モベンバー

口ヒゲのことを英語のスラングでMOと言います。この言葉「MO」と11月を表すNOVEMBERを組み合わせた「MOVEMBER(モベンバー)」というムーブメントがあります。これは「男性の健康への意識を高める」という目的の活動なのです。

女性に比べると男性向けの病気や健康についての啓発活動はまだまだ遅れているそうです。例えば以下のような事実をご存知でしたか?

・6人に1人の男性が人生において前立腺がんと診断される。

・2.1分ごとに新しい診断が下され、18分ごとに誰かが前立腺がんで死亡している。

上のデータはアメリカでのものですが、前立腺がんは日本でも近年増加していると言われます。前立腺がんは男性特有の病気で、命に関わることもありますが、早期発見と適切な治療により完治も可能な病気です。

しかし、そんな男性の病気と、「ヒゲ」にどんな関係があるのでしょうか?

話は2003年にさかのぼります。オーストラリアに住むデザイナーのトラビスと友人のルークはバーで「口ヒゲ」について話していました。かつて流行していた「口ヒゲ」をもう一度流行らせたら面白いと考えた二人はロゴをデザインし、「11月は口ひげを生やそう」と皆に呼びかけて、30人の「口ヒゲ仲間」を集めることに成功しました。

この「口ヒゲ」運動が意外に盛り上がったので、その翌年、彼らはこの呼びかけをもっと何か社会のためになることのために使えないかと考えだしました。

「女性のための啓発活動に比べて、男性の健康問題についてはそのような活動はあまり見かけない」

そう気づいた彼らは女性に乳がんの啓発活動「ピンクリボン運動」があるように、男性には男性ならではのシンボルでもある「ヒゲ」を使って男性の健康について呼びかけるヒゲ運動=モベンバーを始めることにしたのです。

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翌年は11月に450人の「口ヒゲ仲間」がヒゲを伸ばし、500万円以上の寄付金が集まりました。これは、オーストラリアの前立腺がん基金の歴史の中で、一回の寄付額としては当時最大のものでした。

友人同士の楽しみとしてはじまったこのモベンバーは、口コミやインターネットを通じて草の根的に年々大きくなり、今では21カ国で百万人を超える人々が参加し合計140億円近くの寄付金を集める大きな運動に育ちました。内容も、前立腺がんや精巣がんなどの男性特有の病気はもちろんのこと、ガン全般やうつ病までも含む「男性の健康」一般についての意識を高めるためのものとなり、寄付金は前立腺がん基金や、がん全般への基金である「LIVESTRONG」基金などへと寄付されています。

モベンバーの流れ

モベンバーに参加する男性は「モー・ブラザー」と呼ばれます。彼らはまず、11月1日にキレイにヒゲをそり、その後1ヶ月間口ひげを伸ばしながら、モベンバーの活動を行います。

モベンバーの活動は主にインターネット上で行われています。モベンバー・ドット・コムからメンバー登録すると、サイト上に自分専用のプロフィールページが持てます。このページを通じて、自分の友人たちに寄付の呼びかけや、イベントへの招待などを行うのです。また、自分のヒゲの成長具合を写真で投稿する「ヒゲ日記」などもこのページで出来ます。

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「ヒゲ、どうしたの?」

普段ヒゲを生やしていない男性が口ヒゲを生やすこの一ヶ月間、周りからヒゲについて尋ねられる度に「実は今こういう活動に参加しているんだ」と自然と男性の健康についての会話を始めることができ、病気についての意識を高めたり、寄付金への協力なども集めたりすることができるというわけです。

モベンバーに参加するのは男性だけではありません。モー・ブラザーをサポートする女性達は「モー・シスター」と呼ばれ、モベンバーの大事な参加者として捉えられています。夫やボーイフレンドなどの周囲の男性に11月はヒゲを伸ばすよう勧めたり、ヒゲを生やすことに慣れていないモー・ブラザーが一ヶ月間ヒゲを伸ばし続けられるように元気づけたり、健康診断を勧めたり、寄付金集めを手伝ったりしています。

また、ヒゲを生やせない女性にとってはヒゲモチーフをつけることも、モベンバーのサポート方法の一つです。モベンバーも、様々なブランドとコラボレーションし、収益の一部が寄付に回るようなグッズを毎年売り出しています。

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モベンバー活動は、あくまで男性の健康のための啓発運動であり、ファッションとして「ヒゲモチーフ」を流行らせることを目的としていたわけではありません。しかし、かなり広まってきているこのモベンバー運動が、近年の「ヒゲブーム」にも一役買っていたかもしれませんね。

知識は力

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モベンバー基金のLA事務所で働くカレン・コスタさんにお話を伺いました。

カレンさんがモベンバーを知ったのは、友達に誘われて参加したイベントがきっかけでした。初めは「知り合いができて楽しいから」ということでモベンバーイベントのボランティアをはじめた彼女でしたが、翌年、知り合いが男性特有の病気でなくなるという悲しい経験をします。大切な人を病気で亡くしたくない……カレンさんは、医学的研究や患者へのサポートのために寄付金を集めたり、周りの人に健康診断を受けるように勧めたりするモベンバーの使命をより真剣に捉えるようになり、今ではスタッフとして働いています。

「口ヒゲの意味は人によってそれぞれです。なんとなく楽しいから、可愛いからという人もいますし、私にとって口ヒゲは父を思い出すものなんです。私たちは多くの参加者から個人的なストーリーを聞くのですが、皆それぞれに違います。でも男性の健康についてもっと意識が高まって欲しいという思いは皆共通ですね。“知識は力”であり、それで命を救うことができるんです」

単に流行のモチーフだと考えていた口ヒゲですが、実は「大切な人に健康でいて欲しい」という愛情が込められていたのだと考えると、もっと可愛らしく素敵なものに見えてきました。

調子のよい時は見逃しがちな「健康」ですが、このような機会に、自らの、そして大切な人の健康について考えなおし、しっかりと体を労ってあげたいものですね。

参考資料

「口ヒゲ」の他にも啓発のために使われるモチーフは数多くあります。あなたの近くで気になるシンボルを見つけたら、是非意味を調べてみてくださいね。

ピンクリボン ― 乳がんの啓発キャンペーン

ピンクリボン
乳がんの啓発キャンペーン

レッドリボン ― HIV/AIDSの啓発キャンペーン

レッドリボン
HIV/AIDSの啓発キャンペーン

 

イエローリボン ― 骨のがん/骨肉腫の啓発キャンペーン

イエローリボン
骨のがん/骨肉腫の啓発キャンペーン

透明なリボン ― 肺がんの啓発キャンペーン

透明なリボン
肺がんの啓発キャンペーン

 

※リボンの色や意味は、国によって異なる場合もあり、同じ色のリボンでも複数の意味を持つ場合がございます。ここでは主にアメリカで使われている医療/健康に関係するシンボルをご紹介致しました。
※※モベンバーのホームページ上では9月から登録者を募集しています。世界のどこからでも参加できるそうです(英語)

参考

Movember Foundation(英語)
http://ex.movember.com/

この記事を書いたライター

Editor / Staff Writer

アメリカ発の新しい美容法&美容グッズ好きが高じて、美容製品を日本に紹介するため渡米。趣味はアロマテラピーとサイクリング。精油の自然な香りの魅力とパワーに魅せられています。いつまでも美しくアクティブな女性でいるための秘密を求めて今日も取材に走ります!!

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